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ログミーは著作権法上アウトかセーフか?コンテンツと著作権について考えてみました。

結論

サービス提供者は、良心とルール(法律)に則り、消費者、サービス提供者、そしてコンテンツ作成者の3者がハッピーな関係でいられるよう対応、サービス提供をしてもらえると、いち消費者として、また、サービス提供者とコンテンツ作成者の支援および協業を生業にしている身として、嬉しい限りです。

 

コンテンツを作る人が減ったら困る

著作権を有する著作権者の許諾なく、その著作物を営利目的で勝手に利用する人やサービス提供者に対しては、引き続き山本一郎切込隊長に切り込み続けてもらいたいなと思っているわけで。

 
また「ログミー」が著作権者に無断でログを書き起こして公開して著作権違反的なカーニバルを起こす(山本 一郎 | 個人投資家 2014年2月3日 0時29分)

 
おもしろいコンテンツが減ってしまったら困ります。

 
主に制作費、のことではなく、生活費、という意味で。

 
良いコンテンツを作るのに必ずしも莫大な費用がかかるとは言いませんが(もちろんきちんと対価は支払われるべきだと思いますし、なんだかんだで人が長時間動くようなものはそれ相応の費用がかかって当然かと)、対価が見合わないもしくは無償となってしまったがために生活に困ってしまうのとではまた話が違うのかなと。

 
「コンテンツを作る人」になりたいと思う人が減ってしまうんじゃないかと。
(一方でそこまで心配しなくても減らないよ、とも思ってますが)

 
先人の生活が苦しい様子を見て、それでもその世界にいきたいという人はそれなりに自信や覚悟がある人で、それ以外の「おもしろいコンテンツを作れたかもしれなかった人」の芽を摘んでしまうことに繋がらないかなと。
(そこで進まない人はそれまでだ、というご意見もあるでしょうけど)

 

ポイントは、コンテンツの使用目的が「営利目的か否か」か?

TwitterやFacebookをはじめとするSNSがこれだけ普及した現在、かつ、身の回りには著作権が発生しているおもしろいものはたくさんある中で、SNSの特性上、それらおもしろいコンテンツをフォロワーや友達に共有したいという思考や言動は至極当然なことで、それを利用規約や法律で取り締まるのは著作権者にとってもデメリットのほうが多いのではないかと思うわけで。
(存在を世に広めるための費用は無いけれど優れたコンテンツを作れる人にとって、SNSは多くの人の目に触れる機会を作れる素晴らしいサービスでもあり)

 
ポイントは「営利目的か否か」かなと思っていて。

 
とは言ったものの、そのアウトとセーフの境界線の定義がやっぱり難しくて。

 
引用の多い評論調の記事が人気で日々たくさん閲覧されているブロガーがアフィリエイトで儲けるのはアウトなのかセーフなのか、とか。

 
ある種の人にとって有益である情報を企業サイト内にあるブログで発信し、でもその目的は企業の認知、ブランディングだったり、「この資料が欲しい人はメールアドレスを入れてください」的なリード獲得(メールアドレスの獲得)だったり。

 
そもそも営利目的ではないんだけど結果として儲けている(営利なことに関連してしまっている)パターンと、メディアとして運営している=元から営利目的なパターンとでは判定が変わるのか、とか。

 
ちなみに私はFlickrの画像をブログや講演資料に使うことがありますが、著作権者の意向に合わせてクレジットを入れるなどの対応をしています。完全に転載不可とか、非営利目的なら転載可だけどクレジットは入れてね、とか、ご自由にどうぞとか。

 
このあたりの気付きというか学びは、小川卓さんの講演がきっかけでした。初めて小川さんの講演に出席した際、スライドの最後に画像のクレジットが入っていたのを見て、考え、調べ、理解し、ルールとして徹底するようにしました。

 
もとい、アウトかセーフの判定は非常に難しいと思っています。

 

キュレーション系サービスについて

言い方が適切ではないかもですが、他人のふんどし(コンテンツ)で相撲をとる(事業を行う=収益をあげる)、場合は、ふんどしの所有者に対し事前に事業に利用する旨を伝え、許諾を取り、提供してもらい、対価を支払う、べきなんじゃないかなと。
(もちろん対価の有無については双方の意思次第でこの限りではないかと思います)

 
ちょっと話がズレて対価の話になっちゃいますが、去年やなせたかしさんがお亡くなりになった直後、やなせさんへの対価の話が話題になっていましたが、プロにタダでやってもらおうとする姿勢って、そこには相手に対する尊敬はなく、むしろ侮辱してますよねと思うわけで。失礼ですよね、すごく。

やなせたかしの晩年は「タダ働きばかり」 「甘えてきた多くの自治体は恥じろ」と吉田戦車が激怒(J-CASTニュース)

 
もとい、キュレーションサービスとは、著作権者とのやりとりをきちんとしていないと、また例えが適切でないかもですが、なかなか冷めなくて汁物も入る高性能な弁当箱を低コストで作り、デパ地下で高級店の試食コーナーを回ってその弁当に詰めて売る、みたいなゲスい話になりえてしまうのかなと。

 
独自の付加価値が付けた入れ物を作り、中身はタダで仕入れた良質なもの。

 
「試食」は文字通り試してもらうためのもので、その人に食べてもらって購入を検討してもらうもので、それを転売して儲けてもらいたいために無償提供しているわけではないわけで。

 
しかもお店には仕入れ料は一銭も払わないという。

 

【事例】「ログミー」はアウトかセーフか?

昨年(2013年)ログミーというサービスがリリースされました。
対談、インタビュー、講演などの公開動画から発言を全文書き起こして=テキストに変換して公開する、というサービスです。

 
ログミーとは?

 
こと内容については話し手がおもしろいので当然おもしろいわけです。
受け手によってそのコンテンツは非常に興味深く、価値があるものです。
私もよく閲覧しています。

 
ここだけ切り取って話すと非常に良いサービスのように思えるのですが、興味関心を持つ人が多いコンテンツを提供し、メディアとして広告収入がある=営利目的で運営している中で、そのコンテンツの用意の仕方、自社オリジナルではないので=つまり仕入れはどのようなフローで行われているのか。

 
コンテンツ=著作物の著作権者に対してはどのような対応をとっているのか。
事前の許諾は?対価の支払いは?
ないようなのです、許諾も支払いも。
削除要請があれば即座に応じる=削除する、というスタンスなようで。

 
以下、公式サイトの「ログミーとは?」より一部引用。

※記事内の各発言の著作権は引用元動画の発言者に属します。問題のある場合は、発言者様ご自身からご連絡をいただきましたらすぐに削除いたします。また、発言者様のご要望があった場合には、記事テキストを無償でご提供させていただくこともできます。

 
【余談】
情報は「いつ」「誰が」「どのように得た、発信した」ということと併せて受け取ることで、その情報の受け取り方がより適切にできると思っています。

 

じゃあ日本の法律的にはどうなの?

もとい、このサービスの話、日本の法律的にはどうなんでしょうか。

 
以下の記事が参考になりました。
ログミーに対する雪丸弁護士の見解です。
(関係ないですが筆者はなにげに法学部卒。高校では物理と化学専攻、大学受験は数学を選択しましたが)

 
講演会の動画を「テキスト化」する新サービス「ログミ―」 著作権的に問題ある?(弁護士ドットコム 2013年07月09日)

 
以下、本文より一部引用。

一方、著作権法の中には、一定の場合には著作権者の許諾がなくても、著作物の利用を可能にする制限規定(同法第30条~50条)が用意されている。たとえば、著作権法40条1項には、以下のように記されている。

「公開して行われた政治上の演説又は陳述及び裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む。第四十二条第一項において同じ。)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる」

つまり、政治家の街頭演説などは、書き起こして公開しても問題ないというわけだ。では、今回のケースでは、「著作権法40条1項」は適用されないのだろうか。

「『政治上の演説』は、本来的に広く国民に伝達されることが予定されているもので、民主主義的観点からは、『政治上の演説』を広く報道できることが望ましいために設けられた規定です。

したがって、今回の講演が『政治上の演説』に該当すれば、本条で著作権者(講演の登壇者)の許諾がなくとも、テキストをウェブ上へ掲載することも許されるということになります。

今回、問題となったテキストはもう見ることができませんので、中身の検討ができませんが、講演のタイトルからすると、どうも『政治上の演説』とは言えなさそうですね。引用(同法32条1項)や時事の事件の報道のための利用(同法41条)も適用できないと思われます」

 
つまり、ログミーで書き起こしている動画は「政治上の演説」にはあたらないため、著作権法40条1項は適用されない=著作権者の許諾なく著作物を利用してはいけない=アウト、という解釈できるのではないでしょうか。

 
サービスとして良いコンテンツを提供していても、舞台裏ではルールが守られていなかったら、それはアウトなわけで。

 

もう一度結論

サービス提供者は、良心とルール(法律)に則り、消費者、サービス提供者、そしてコンテンツ作成者の3者がハッピーな関係でいられるよう対応、サービス提供をしてもらえると、いち消費者として、また、サービス提供者とコンテンツ作成者の支援および協業を生業にしている身として、嬉しい限りです。

 
※個人的に、サービス自体は非常に良いと思っているので、きちんと著作権者やコンテンツ元に許諾を取り、契約もしくは対価を支払い、サービスは月額100円とか会員制にしてそれを著作権者への対価に回すなどしても良いと思うので、各人が納得のいく健全なビジネスモデルの元、運営頂ければと思っています。

 

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