Looker Studio から Data Studio へ ─ 日本では「データポータル」のまま、何が変わるのか

2026年4月10日、Google は Looker Studio の名称を Data Studio へ戻すと発表した。実際にツールを開くと、英語表記は「Data Studio」に切り替わっている一方、日本語表記は引き続き「データポータル」のままになっている。本記事では、GA4 や BigQuery を日常的に扱う実務マーケターの視点で、今回の発表内容と日本固有の事情を事実ベースで整理する。


目次

何が起きたのか

発表元は Google Cloud 公式ブログで、執筆者は Sean Zinsmeister 氏(Director, Outbound Product Management)と Jennifer Skene 氏(Product Manager)。タイトルは “Data Studio returns as new home for Data Cloud assets” だ。

ブログ本文では、Looker Studio を Data Studio に戻すと同時に、製品の位置付けそのものを「個人データ探索のためのハブ」へと再定義することが明示されている。詳細な戦略や追加機能については、2026年4月22日から24日にかけて開催された Google Cloud Next ’26 で順次発表されている。

筆者の手元の環境では、ツール左上の表記は既に英語で「Data Studio」、日本語で「データポータル」となっており、移行は実機レベルでも進んでいる。


名称の変遷を振り返る

今回の改称を理解するには、これまでの名称の変遷を押さえておきたい。

時期出来事
2009年10月30日株式会社DTSが「データスタジオ」「DaTaStudio」を第9類・第42類で商標登録
2016年3月15日Google が Data Studio を発表(英語版)
2018年11月頃日本国内のみ「Googleデータポータル」へ名称変更
2019年6月Google が Looker を26億ドルで買収すると発表
2020年2月Looker 買収完了
2022年10月11日Google Cloud Next ’22 で Looker Studio へ統一改称、Looker Studio Pro を発表
2026年4月10日Data Studio へ再改称(英語版)

ここで注目したいのは、日本だけ早い段階から「データポータル」という独自の名称が使われてきたことだ。

その背景には、商標上の事情がある。Google が Data Studio を発表した2016年より前の2009年に、株式会社DTS(東京都中央区、東京証券取引所プライム市場上場の独立系システムインテグレーター)が「データスタジオ」および「DaTaStudio」を第9類(電子計算機用プログラム等)および第42類(電子計算機のプログラムの設計等)で商標登録していた。これは特許情報プラットフォーム J-PlatPat の登録5277516および5277517で確認できる(筆者が J-PlatPat で確認した内容はこちらの X ポストに投稿している)。

この区分はまさに Google のサービスと重なるため、日本市場でそのまま「データスタジオ」という名称を使うことは難しかったと考えられる。結果として日本では「データポータル」という独自名称が採用され、英語版が Data Studio から Looker Studio、そして再び Data Studio へと変遷する間も、日本ではこの事情を踏まえた一貫した対応が取られている。2026年4月の再改称においても、英語版が Data Studio に戻る一方、日本語版は「データポータル」が維持されている。


機能面の変化:3つのアセットの統合

今回の発表は単なる名前の変更ではない。Google 公式ブログによると、新しい Data Studio は3種類のアセットを一元管理する「ハブ」として再設計されている。

  • Reports: 従来のレポート機能。既存のダッシュボードはそのまま使える。
  • BigQuery Conversational Agents: BigQuery 側で作成した会話型エージェントを Data Studio で利用できる。
  • Data Apps in Colab Notebooks: Colab Notebook で構築した Python ベースのデータアプリを統合できる。

公式リリースノートには、運用面で注意すべき仕様変更も記載されている。Conversational Analytics は全 Data Studio ユーザーが利用可能になった一方で、データエージェントの作成は BigQuery 側でのみ行う形に変更された。Data Studio 内で直接エージェントを作ることはできなくなっている。過去の会話履歴は「レガシービュー」で参照可能だが、新しい体験には自動移行されない。

GA4 と BigQuery を組み合わせて分析している実務者にとっては、エージェント作成の起点が BigQuery に集約されたことを押さえておきたい。


2つのエディション

Google 公式ブログでは、新しい Data Studio が二つのエディションで提供されることが明記されている。

Data Studio(無料版) は引き続き個人分析・可視化のオンランプとして提供される。アドホックなレポート作成や軽量なダッシュボードはこちらでカバーできる。

Data Studio Pro(有料版) は AI 機能やエンタープライズグレードのセキュリティ・管理・コンプライアンス機能を含む。ライセンスは Google Cloud Console または Google Workspace 管理コンソールから購入できる。既存の Looker Studio Pro ユーザーは Data Studio Pro へ自動移行される。

なお、具体的な料金については現時点で公式の発表内容に含まれていないため、本記事では言及しない。


既存ユーザーへの影響

Google 公式ブログでは、既存ユーザーへの影響について次のように述べられている。既存のレポート、データソース、アセット、ユーザーはすべて自動的に新しい体験へ移行され、ユーザー側のアクションは不要だ。レポートの URL や共有リンクも基本的にそのまま機能する。

ただし、実務者として確認しておきたい点はいくつかある。社内資料やクライアント向けドキュメントには「Looker Studio」表記が残っているはずなので、英語表記は「Data Studio」へ、日本語表記は「データポータル」のまま、というルールで順次更新するとよい。BigQuery 連携でデータエージェントを運用している場合は、作成フローを BigQuery 側中心に見直す必要がある。

過渡期の数週間は、Google 自身のドキュメントやヘルプページにも「Looker Studio」表記が残ることが想定されている。これは Google も認識しており、順次更新されるとアナウンスされている。


まとめ

今回の発表のポイントを3行で整理すると以下になる。

  • 英語版は Looker Studio から Data Studio へ再改称、ただし日本語版は引き続き「データポータル」
  • 製品の位置付けは「個人データ探索のハブ」へ。レポート・BigQuery エージェント・Colab データアプリの3つのアセットを統合
  • 既存レポートは自動移行、ユーザー側のアクションは不要

日本市場で「データポータル」表記が続く背景には、株式会社DTSによる先行商標という事情があり、これは英語名がどう変わっても変わらない構造的な理由だ。Google Cloud Next ’26 では Data Cloud と Analytics 全体のビジョンも順次共有されているため、引き続き続報を追っていきたい。


参考

  • Google Cloud Blog「Data Studio returns as new home for Data Cloud assets」(2026年4月10日)
  • Google Cloud Blog「統合ビジネスインテリジェンスプラットフォーム、Looker の次なる進化の紹介」(2022年10月11日)
  • Data Studio 公式ドキュメント・リリースノート
  • J-PlatPat 商標登録情報 5277516(「データスタジオ」、権利者: 株式会社DTS)
  • J-PlatPat 商標登録情報 5277517(「DaTaStudio」、権利者: 株式会社DTS)
  • 筆者 X ポスト: https://x.com/t_shibuya/status/2043493704120533431
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